――続いての「タッタ」ですが、こちらはフジテレビ系「めちゃ×2 イケてるッ!」2017年テーマソングです。この曲もドームライブで披露されていて、数万人でのタンバリンを使用した“タッタダンス”は圧巻でした。
岩沢:あれはめちゃイケさんのおかげというか。
北川:「タッタ」は、すべてが点ではなく線で繋がって曲が発展していったのが面白かったですね。僕がつくった曲にめちゃイケが関わり合って、タンバリンのアイディアも番組派生で巻き起こったことで、それが雪だるまのようにどんどんでっかくなっていって。東京ドームであんな人数がタンバリンを持つなんて、歴史的事件ですよ(笑)
――たしかに(笑)。こちらはどちらかというと王道のゆずらしさ溢れる弾き語り楽曲だと思います。
北川:「タッタ」と「カナリア」は、曲のテーマや表現方法も本当に対極にあって。「タッタ」の方がベーシックなスタイルだと思うし、ゆずらしい広がり方をしてると思う。この2曲をリリースできることで、僕自身すごくフラットに戻れたというか、良い新しいスタートが切れたと思います。歌詞も、いままでの自分たちを讃えてあげるのと同時に、そこに固執せずにさらにいいものをつくっていくんだという気持ちで書きました。そういう想いは忘れたくないなと思いますね。
岩沢:実は弾き語り以外のアレンジも考えていたんですけど、結果、弾き語りになって。めちゃイケでの披露も大きかったんですが、1周まわって弾き語りが良かったという、珍しいパターンだったと思います。
――続いて「天国」は、北川さん詞曲によるミディアムナンバー。レコーディングはスタジオ内で一発録りされたそうですね。
北川:もともと曲の断片はあったんですけど、 EP のコンセプトが決まってきた中で、この曲を収録するために本格的にやってみようと。「謳おう」 EP について、元々アコースティックで全部完成させようとは思っていたんですけど、最初にやったアレンジでは、“天国”という言葉に囚われすぎちゃって、アコギで弾く教会音楽みたいなものになっちゃったんです。それがちょっと綺麗すぎて。この「天国」って、実際に天国に行く話じゃないし、地上から見上げて思う天国のことだから、もっと土臭いほうがいいなと思って。プリプロの内容をすべて取っ払って、一発録りで完成させました。
――2015年発売のシングル「終わらない歌」に収録された「みらい」や、アルバム『TOWA』収録の「終わりの歌」にも通じる、耳元で音楽のリアルさが伝わってきます。
北川:昔、ビートルズだったり、洋楽を聴いていてよくあったんですが、ネイキッド盤というか、原曲のデモ音源やラフで録音されたものとかがすごく好きで。「天国」も完成形ではあるんだけど、そういうデモテープでしか出せない音というか、良さを作品の中で出せないかなと思って。
岩沢:結構ガチンコ勝負というか。ちょうどドームツアーのリハーサルもあったりしたなかで、演奏することとレコーディングすることが近い時期にあって、そこがうまくハマったんだなと思いました。
――歌詞のメッセージも、単に天国の話というより、物事や事象に対しての価値観や捉え方が含まれているなと思いました。
北川:なんだろうな。忘れたくないっていうか。僕は、いろんな先人や先輩ミュージシャンたちの想いを勝手に受け継ぎたいなと思ってるんです。こういうことって10代や20代のときなら歌えるんだけど、40代になっていろんなことがわかってくると、歌うのが難しくなってくるんです。でも、ジョン・レノンや忌野清志郎さんも、こういうメッセージソングを歌い続けていたし、僕も、もちろんポップソングをつくっていくんだけど、「天国」のように、先輩方から受け取ったものを、自分自身の要素としてはつくり続けていきたいなという決意も込めてつくりました。
――4曲目は、岩沢さん詞曲による「保土ヶ谷バイパス」です。 EP 全体を通じて、同じ“アコースティック”という括りでも、やり方次第でここまで色が変わるんだ、ということに驚かされます。
北川:なにか純度の高い弾き語り曲が、この EP の締めくくりとしていいんじゃないかと思いました。「天国」とは違って、アコギやハーモニーの良さを丁寧につくって、トータルで「謳おう」 EP が完成できればいいなと思いましたね。
岩沢:レコーディングではいろいろやりましたね。音数自体は少ないので、埋め放題だと思いつつ、埋めちゃいけないところもあるし。譜面通りにいけば簡単に弾ける曲ではあるんですけど、どうやって力を込めて弾こうかとか、ピックの種類を変えたり、マイクの位置を変えてみたり。いまのゆずだからこそできる、ちょっとした年輪を見せればと思いました。
――歌詞も、過去を様々な視点から切り取っている風景描写が印象的です。
岩沢:なんて言ったらいいんだろうな。長いドラマを観ていると、「こいつ誰だっけ」っていう人物が毎回いるんですけど(笑)。途中で一度あらすじをさらうみたいな、そういう曲にしたくて。突っ走ってはいないけど立ち止まったりもしていなくて。前回までのあらすじを、自分たちがやってきたことに例えて、いろんな人の人生のページをめくるスピードをちょっと緩めて。保土ヶ谷バイパス、結構混むんですよ。そんな感じです。