――続いて6月28日発売の「4LOVE」 EP について、お話を聞かせてください。
北川:「謳おう」 EP のリリースがある程度決まったなかで、チーム内で「もう一枚、 EP を出すのはどうか」という話がでました。もちろん大変なことだろうなとは思いつつ、もしそれができるんだったら、すごく面白いなって思ったんです。そのすべてのエネルギーをつくったのが、1曲目の「愛こそ」ですね。
――「カナリア」「タッタ」に続き、ゆず20周年を象徴する楽曲になっていると思いました。
北川:20年、大きな棲み分けで「J-POP」っていうものの中でゆずは音楽をつくり続けてきて、その20年を経て、自分が思うポップソングってこういうものなんだ、という曲ができた気がします。しかも、今までやってきたことをただなぞるんじゃなくて、新しい要素を含んだものをポップソングとしてつくりたいという思いがありました。
――最初に浮かんだフレーズはどこですか?
北川:これも蔦谷くんのスタジオに行って、こんなのどう?と色々やり取りをしていたら、サビのメロディができたんです。その後、それを持ち帰って残りの部分をつくり始めたんです。一番肝だなと思ったのは、サビのラーラララ~ラララ~ラララという、1音ずつ下がっていくメロディ音階。そこにどういう言葉を入れるかが難解で。「イロトリドリ」のサビ頭以来の難解さかな。あのときは大久保の韓国料理を食べた帰りに思いついたんですけど(笑)。
――そして浮かんだのが、いまのサビのフレーズですね。
北川:はい。ずっとメロディを反芻していて、それでやっと浮かんだのが「愛こそ世界を変える」だったんです。今回、ジャケットビジュアルにも反映されていたり、それこそさっき話した「天国」にも通じてるんですけど。今、自分のルーツにもう一度還りたいなと思っていて。ザ・ビートルズの「ALL NEEDS IS LOVE」(愛こそはすべて)という有名な曲があって。今こそ、あの10代のときに「愛で世界は変わるんだ」と、本気でその歌に没頭して聴いていた頃の気持ちを取り戻したかったというか。いろんなことを経験して、愛なんかないんじゃないかとか、どうせ夢想だろとか思ったりもしたけれど、ゆずを20年やって、40歳になった自分がもう一度、あの衝動を歌にしてみようと思ったんです。その上で、この大きなテーマを、この時代の中でどうやってみんなに届けたらいいんだろうということはすごく悩みましたね。
――サウンドのテーマはあったんですか?
北川:蔦谷くんとサビのデモをつくっていたときに、このアコギの感じとブラスセクションのリズムはすでにあったんです。洋楽に多いアプローチだと思うんですけど、このサウンドがあったからこそ、「愛こそ世界を変える」という言葉が導かれたんだなと思いました。
――サビ中の手拍子や間奏など、ライブがイメージできる要素もいくつか盛り込まれています。
北川:ライブは直接的な作業というか。みなさんに曲を届けられる一番良い場所で、そこでみんなで一体感をつくれるもの。それこそザ・ビートルズが60年代後半に、世界中継でミック・ジャガーやファンの皆さんと歌っている姿が記憶に残っていて。あれを現代で違った形でできないかなと。僕と岩沢だけが歌うものじゃなくて、会場の人たちを一体になって歌えるものがいいかなと思いました。
――岩沢さんは「愛こそ」についてどんな印象をお持ちですか?
岩沢:ゆずっぽさを大事に、エッセンスとして新しいことにも挑戦している曲だと思いました。僕も同業者だからわかるんですけど、「愛」というテーマって、シンプルだけどすごく難しいんですよ。ただ、難しいテーマならではの気難しさはなくて。そういう工夫もされているなと。こういう曲を歌うのは、つくった曲に責任が持てるかという覚悟の話だと思っていて。「これけ考えて、この曲をつくったんだ」という覚悟がなければ持ってこないだろうし、上っ面な愛ではないというか。なので、僕も責任を持って歌いました。
――「愛こそ」に続くのは、岩沢さん詞曲の「日常」。“4LOVE=4つの愛”というテーマながら、その大きさにとらわれず、日常に生じる葛藤や想いが綴られています。
岩沢:ずっとメロディやコード進行が頭のなかにあって。今回 EP をつくるときに、よし、ちゃんと曲にしようと思って形にしていきました。日常って、ほのぼのするイメージにもありつつ、実際は刻一刻と時が経ってるんだなと思っていて。そのスピードを感じない人もいれば、鬼気迫ると思う人もいる。“未来”も、昨日の自分からいえば今が未来なわけで、やばい、時間って進んでるんだなと(笑)。皆さんの日常に照らし合わせて聴いてくれたらどうなるんだろうと思いながら、楽しくつくりましたね。
北川:「天国」や「保土ヶ谷バイパス」と同じく、「4LOVE」という EP のコンセプトにしっくりくる曲だなと思って、そして『ゆずイロハ 1997-2017』でも「悲しみの傘」をやってくれた釣俊輔くんにアレンジをお願いして、曲にぴったりなサウンドが返ってきたんです。
――「愛こそ」とメッセージの伝え方は違えど、同じ“愛”が表現されていますね。
北川:2人とも、伝えようとしてることってあんまり遠くないんじゃないかなと思っていて。その表現方法が違うし、だからこそゆずの面白さが出てくるというか。そんなところも、僕は大事にしたいなと思ってます。
――3曲目の「ビーチ」そして「ロンリーカントリーボーイ」は、このサウンドがすべてと言いますか。
北川:「ビーチ」は、ビーチ感がすごいよね(笑)。なんか、久しくこういう曲をつくってないなと思っていて。でも、20年やってきたからこそ開き直れるというか。無理なことをしなくても、自然に生まれてきたものを形にすれば、しっかりといいものはできるぞと。ありそうでなかったもの、今やると逆に新鮮みたいなことは念頭にあって、それを「ビーチ」や「ロンリーカントリーボーイ」でやりたいなと思いました。
岩沢:とても目立つ曲ではないけど、この1枚を彩るものになるというか。「天国」も「保土ヶ谷バイパス」もそうなんだけど、この曲を表題曲に!ではなく、肩の力の抜いた曲が入ることですごくバランスが良いというか。これぞ EP の妙かなとも思います。レコーディングしてるときも「こんなに曲入れるんですか!?」みたいな話を制作スタッフの人としたりして、面白かったですね。
北川:「ビーチ」も「ロンリーカントリーボーイ」も、つくってる俺たちが楽しいぞ!みたいな(笑)。メッセージももちろん大切なんですけど、それと同じくらい、曲から景色や情景を伝えることも好きで。この2曲は、情景や音楽のバラエティ感をうまく出せたんじゃないかなと思っています。普遍的なもののなかに、いまの時代だからこそ聴ける音色を取り入れました。
――以上、アルバム並のボリュームでお話をお聞きしました。改めて、 EP 2枚連続リリースということで、どんなお気持ちですか?
岩沢:すごい世界観だなと思いますね。いままでのシングルではここまではいかなかったと思います。
北川:20周年の活動をやりながら、すべての時間を費やしてつくりましたが(笑)、こういうコンセプトものをつくるのは大好きだし、すごく楽しみながらできました。20周年でしっかりとした「。」がついたからこそ進めたと思うし、ゆずの未来が自分自身、楽しみになりました。ここからまたみんなに面白いものを届けられると思います。
――秋には5年となる全国ホールツアー<YUZU HALL TOUR 2017 謳おう>も発表されました。
岩沢:新曲を歌える場があるのは嬉しいですね。気負いせず、純粋にレパートリーが増えたというか、仲間が増えたというか。定番曲もありつつ、 EP の曲もありつつ、ホールならではのライブになればいいなと思います。
北川:20周年はとにかく皆さんに感謝の気持ちを届けることがテーマで、大きな会場で派手に盛り上がることももちろん大事ですが、全国の遠くにいる人たちに僕たちの唄を届けることも大切な活動で。ホールツアーは早い段階からやろうと考えていました。内容は...“謳おう”のタイトルどおり、 EP の曲はもちろん、『ゆずイロハ』の延長線上でもあるので、全部ひっくるめて、ハートフルなコンサートにしたいですね。