混沌とした灰色の世界から、いよいよ愛があふれる桃色の世界へ・・・
ゆずの新曲「LOVE & PEACH」は世の中の空気の色合いを一気に変えていく突き抜けたパワーと躍動感と高揚感とを備えた楽曲だ。
フジテレビの夏のイベント、“お台場合衆国”のテーマソングにもなっていて、陽気なエネルギーが詰まっているポップでジューシーな曲。
聴いていると、つい踊り出したくなるお祭りソングでもあるのだが、ただ楽しいだけの歌ではない。
悲しみや苦しみが存在する世界だからこそ、そして混沌とした空気が漂っている時代だからこそ、より威力を発揮する曲でもある。「Hey和」や「from」など、最近のゆずのシングル曲とは対極にあるカラフルでにぎやかな曲調だが、今、これが歌いたいんだという強い必然性を持っているという点と生命力を感じさせるという点では共通している。
この歌が2011年の夏をさらにカラフルに彩っていくのは間違いないだろう。

●新曲「LOVE & PEACH」について-----

▼春からずっとツアーが続いていましたが、「LOVE & PEACH」はいつ頃作ったのですか?

北川
ツアー中ですね。作り始めたのは5月21日の静岡のライブが終わったぐらい。もともとツアー中に曲を書こうと思っていたんですけど、ツアー自体が精神的にかなりヘビーなもので、なおかつ、今、何を歌えばいいんだろうっていう迷いもあって、なかなか思うように書けなかったんです。そんな時に「お台場合衆国のテーマソングを歌って欲しい」という話をいただいて、いい機会だから、これを機に、思いっきり突っ込んで書いてみようと思って作り始めました。でもすぐには作れなかった。良くも悪くも、当たりさわりのないことしか、歌えないというか。世の中の多くの人がそうであるように、自粛ムードや感傷的なムードが蔓延する中で、自分自身、言葉を発することを少し怖がっていたところがあったのかなと。自分達が率先して、世の中のムードを変えるきっかけとなる曲を作りたいと思って何曲か作ってみたんですけど、これは違うって、出だしの段階で、もがいてしまっていました。

▼どんなことが突破口になったのですか?

北川
群馬のコンサートの前日だったと思うんですけど、夜中に突然、“フレーフレー”ていうところが出てきたんですよ。それが“振れ! 振れ!”に繋がって、“みんなShake Hip 踊り出す”っていう言葉になっていった。それぐらい弾けたパワーのある曲がいいんじゃないかなって。

▼世の中の空気を変えていくという意味では、共通した部分もありそうですよね。

北川
震災があって、お祭りもたくさん自粛されたじゃないですか。そんな時だからこそ、みんなで一緒に歌ったり踊ったりして、悲しみを吹き飛ばしてしまえるものがいいなって。で、みんなでお尻も振っちゃえって、群馬のホテルの部屋で盛り上がってしまった(笑)。それがスタート地点ですね。

▼岩沢さんはこの曲を聴いて、どう思いましたか?

岩沢
最初は全貌が掴み切れてなかったので、まずはSAKURA STUDIOでいつもにように作業をし始めたんですよ。片っ端からまず録音しようって。そこから分析じゃないけど、どんな意味を持っている曲なのか、掘り下げていって、音をどんどん作っていくという感じでした。

▼確かに、この曲は色々な要素を持った曲で、震災後の空気もちゃんと反映していて、Aメロからは混沌とした空気も感じました。

北川
とっちらかったものを無理して整理しなくていいかな、とっちらかったままぶつけてみてもいいのかなって。自分の頭の中を駆け抜けていく思想や思考のかけらをそのままぶつけてみました。サビでは前向きなことを歌ってはいるんですけど、ただ前に進むというだけの曲ではなくて。今の時代の中での疑問とか、もどかしい気持ちとかが前提としてあった上での歌でもあって。ポップで、一見、おとなしい羊のようだけど、羊の皮をかぶった狼、みたいなところもある。そのギリギリのところまで踏み込んでいこうと思ってました。

▼確かに、かなりシニカルなところもありますよね。でも最終的にポップに弾けていって、元気を与える曲になっているところがすごいなと思いました。

北川
暗い気持ち、ネガティブな気持ちになってほしくはなくて。被災地の方が聴いても、今日は踊っちゃおうかって思ってもらえるものを作りたかったんですよ。

▼どんどん展開していく感じも気持ちいいですが、これはかなり工夫したのでは?

岩沢
展開の仕方はいくらでもあるというか、ゆずのやり方のバリエーションの中からどれを使いましょうかねって色々と試しながら作っていって、このテンポになり、このキーになっていった。時間があまりなかったので、迷っているよりは、実際にどんどん録りながら、固めていくという感じでした。でもいい落としどころに落ち着いたんじゃないかなと思います。
北川
蔦谷好位置くんとのレコーディングワークも含めて、これまで培ってきたものがあったから、この形に出来たのかなと思ってます。AメロもBメロもサビもそれぞれ個性を持ったものが一体になっている。ゆずだけでやってる段階のを聴くと、なんじゃこりゃっていう感じなんですけど、まとめる自信はありましたね。ツアーをやっていく中で、世の中の風も感じていたので、歌のメッセージだけでなく、音楽的にも突き抜けたものを作りたかったんですよ。

▼音楽そのものでもメッセージを示していくということですね。

岩沢
プリプロをやっていくと、これでいいんだろうかっていう壁にぶつかる瞬間があったりするんですけど、この曲に関してはずっとそんな感じで、次から次と出てくる壁をひたすら打破し続けていくという。歌詞を詰め込んでみたり、かけ声を入れてみたり、事務所の皆さんにコーラスで参加してもらったり、色々やりました。

▼マンパワーを結集した作品でもあるわけですね。

北川
底力を試された曲でもありますよね。こういう時代背景の中で、ツアーもやってて、制作期間も短くて、いきなりやろうとしても、出来なかったと思うんですよ。でも『WONDERFUL WORLD』の時からツアー中にも曲を作るようになって、色々と積み重ねてきたものがあったからこそ、短期間でここまで集中して作ることが出来たんだと思います。

▼このハイスピードでのハモりもすごいですが、これは大変だったのではないですか?

岩沢
最初はかなり歌詞が多いなと思って、やや苦労しました。「ちょっと待って、ちょっと待って」って言いつつ、何度も歌い直したりして、口が回らないというケースも多々あったりしましたけど、これぐらい何とかせねばなと(笑)。

▼それぞれのソロ、かけあい、ハモリが、曲を見事に展開させていってますよね。

北川
ツアー中っだったこともプラスに働いたんじゃないかと思います。毎日のように、お互いの声を聞いていたので、ふたりの声を掛け合わせていった時に、どこが一番いいところなのか、イメージしやすかったし、計算しやかったんですよ。
岩沢
どちらかがメインで、どちらかがハモったら、こうなるだろうなっていう想像をすぐ出来たし、このキーでやれば、こういう感じになるだろうっていうのもわかっていたので、形にしやすかったというのはありますね。ひとつ、印象的だったことがあって。「音程は関係なくていいから。そういうハモもあるから。音じゃなくて、吐息というか、言霊だから」って、プロデューサーさんと北川に言われました。その部分はハモリというよりはただのガナリなんですけど、メロディーのメリハリがあって、言霊の力があれば、それでも成立するという。

▼サウンド面、アレンジ面でポイントにしたことは?

北川
サビがキャッチーで最初からガチッとハマっていたんで、Aメロに関しては音楽的にかっこいいアプローチにしようっていう構想は当初からありました。ちょっとファンクな感じ、リズムが跳ねていて、ベースもチョッパーしまくってるイメージ。場面が次から次と変わっていくようなメリハリとエッジのあるものにして、言葉もメロディもポップな中にちょっと毒があるという配置を心がけようと。「蔦谷くん、こういう曲調は得意だし、僕たちのやりたいことをわかってくれるだろうな」って岩沢くんとも話してたんでけど、渡して、返ってきたら、やっぱりすごく良くわかってるなって思いました(笑)。
岩沢
このサウンドは蔦谷くん以外には考えられないという感じですよね。サウンド面で気を付けたのは、ただのおちゃらけた曲ではないうところにいかに仕上げていくか。誰が聴いても、パッと入ってくるポップな要素もあるし玄人が聴いても、おっ、こんなことをやってるんだって思う要素もある。楽しい要素と玄人要素が入り乱れてるところも蔦谷くん、さすがですね(笑)。

▼スタッフの方々が参加したコーラスはいかがでしたか?

岩沢
すごいスパルタでやってましたね。ちょっとした声をボソッっと入れるレベルじゃなくて、ひたすら「元気よく! 元気よく!」って。本格的にピッチがどうという高度な要求もして、しっかり練習してもらって、「次の日もやるから」って言って、録っていった。それぐらい血眼になってのレコーディングでした。
北川
かなりビシビシやってましたけど、プロデューサーの蔦谷くんも最終的には大絶賛してました。

▼たくさんの人が集っていく風景も見えてきて、ライヴでやると、またすごいことになりそうですね。

北川
8月から東北ツアーが始まるんですけど、そこで東北の皆さんと声を出して一緒に歌いたいという思いはありますね。「Hey和」という歌は震災後にたくさんの方から「励まされました」というメッセージをいただいて、大切な曲として育ってきたんですけど、自分たちの表現の方法って、振り子みたいに、違うベクトルで振り切っていくところがあって。「ワンダフルワールド」がある一方で、「おでかけサンバ」があるみたいな。なので、「Hey和」とともにこの「LOVE & PEACH」みたいな歌もあるというゆずの音楽をみんなと分かち合いたいなって。

▼お台場合衆国にも見事にハマりそうですね。

北川
お台場合衆国にはきっと全国からいらっしゃってくれると思うので、その時に来たみなさんが元気になってくれたらいいなという想いも込めて作った曲でもありますね。

▼ツアー“2-NI-×FUTARI”について....

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