ニューシングル「また明日」 TBSドラマ「浪花少年探偵団」主題歌

「また明日」はテレビドラマ『浪花少年探偵団』の主題歌になっています。そのことは念頭において作ったのですか?

岩沢:
ドラマの主題歌のお話をいただいて、そこから曲作りに着手しました。まずドラマの資料とDVD をいただいて、資料を読み始めたんですが、これはあまりそっち側に寄せて作らない方がいいなと思ったので、途中から資料を読むのをやめ、DVD もチラッと観るだけにしておいて、最初にパッと思い浮かんだイメージを大切にして作っていきました。

それはどんなイメージだったのですか?

岩沢:
ノスタルジックなイメージだったんですが、ほのぼのとしたものではなくて、そこに青々しいビートに乗せたらどうなるんだろうって、ある種、実験的な感覚もありました。ゆずとバンドサウンドのエネルギーとを融合したらどうなるんだろうって。しばらくそういうのをやってなかったんですが、15 周年を経た今ならば、ハマるんじゃないかと思ったんですよ。

確かにこの曲って、ノスタルジックでありながら、エネルギッシュでもありますよね。

岩沢:
いい意味での青臭さ、初めてレコーディングした時のような青々しさを出しながらも、その裏側には15 年やってきたゆずがあるというという二面性をサウンドでも表現したかったんですよ。聴く人によって、懐かしさを感じたり、新しさを感じたり、様々な反応が返ってくる曲かもしれないですね。

北川さんは最初に聴いた時、どんな印象を?

北川:
最初にデモで聴かせてもらった時はもうすこし牧歌的でノスタルジックな部分が強かったんですよ。アレンジが変わっていく過程で、新たなテイストが加わっていって、より色んなものが共存する歌になっていった。ノスタルジックな要素もあるし、前に進んでいくエネルギーもある。もともとゆずが持っていたものもあるし、今のゆずだから表現出来るものもある。それらが共存する感じがいいなと思いました。僕個人としては、淡い色なんだけど、その色をさらに強く伝えていくにはどうしたらいいのか、その後押しをしていけたらという気持ちでレコーディングにのぞみました。

この曲を聴いていて、“また明日” ってこんなにいい言葉だったんだって再確認しましたが、歌詞を書く上で心がけたことは?

岩沢:
一番気をつけたのはラヴソング側には行きたくないってことですよね。“君” が登場すると、ついそっちに行きがちになるけれど、この歌の対象はそうではなくて、友達だなって思って。自分達は35 才なんですけど、子どもの頃に、友達と普通に約束もせずに遊んでいたなって。

その頃は携帯電話もスマホもないですもんね。

岩沢:
そうですよね。でも次の日学校に行けば、当たり前のように会えたし、ごく普通に「また明日」って言えていた。でも果たして今、「また明日」って言ってるのかなって。仕事で言うことはたまにあるんですが、それ以外では言ってないんじゃないかなって。そんなことを思い始めて、テーマに着手したんですが、作っていく上で大きかったのは同窓会に出席したことだった。20 年ぶりに岡村中学校の同窓会をやったんですが、20 年ぶりに会うヤツも結構いて。僕らは20才とか21 才くらいでゆずになって、ゆず道を歩いてきたんですが、これから先、ずっと会わない人もいるんだろうなと思っていたんですよ。そこで20 年ぶりに再会したあの感じが新鮮だったというか。それぞれ道は違えど、歩んできて、またここで会えることもあるんだなって。僕らだけが悩んでやってきたわけではなくて、みんなそれぞれにやってきての今なんだなって実感したり。そんな体験も踏まえて、タイムスリップというか、子どもの頃の思いと今の思いと両方詰め込むことが出来たなと思ってます。

懐かしくて新しいというのは久々に寺岡呼人さんがプロデュースしていることとも繋がってきそうですね。

北川:
岩沢くんの同窓会の話にも通じると思うんですが、ここ最近、呼人さんと一緒にやってなかったんですけど、僕らもその間、頑張ってきたし、呼人さんも自分の活動をやってきたことを経て、再会したというのが良かったと思うんですよ。そうそう、この感じというのもありつつ、新鮮さもありつつ。そういう意味でも曲とシチュエーションがぴったり合ってましたね。
岩沢:
今回は呼人さんしかいないな、一緒にやれたらいいなと思っていたんですよ。スタッフ含めて満場一致だった。知らない仲ではないし、直接自分の口で伝えたかったので、電話でお願いしました。便利になったのか、実はレコーディングの本チャン録りまで呼人さんと会わずにアレンジが進んでいったんですよ。「ここはこうした方がいいよね」って電話とメールでやりとりをして、「じゃあ本チャンよろしくお願いします」って( 笑)。

こんな感じでやりたいというキーワードはありましたか?

岩沢:
僕が最初に提示したのは“ネオ・ジュンスカ” っていう言葉でした( 笑)。いわゆるジュンスカのその先みたいなことを呼人さんがまさにやられていたので、そのテイストを盛り込みたいと思ったんですよ。昔のジュンスカではなくて、今の感じを入れたいなって。実際にはやればやるほど、ジュンスカ方向ではないところに行き着いたんですけど。呼人さんの中にあるもうちょっとフォーク寄りなイメージに近づいた。でも最初の段階のオーダーはそんな感じでした。

寺岡さんと一緒に作っていて、新鮮だったことは?

北川:
今回、呼人さんがレコーディングでベースを弾いてるところを久々に見れたのが結構うれしかったですね。以前は呼人さんとやっていても、ベースはミュージシャンを呼んでやることもあったんですけど、最近すごくベース弾いてるじゃないですか。今まではプロデューサーの寺岡呼人さんだったんですけど、久しぶりに会ったら、プロデューサーでもあるけど、プレーヤー的な感覚もすごくあった。最後の“また明日~” のところは呼人さんのアイディアなんですけど、そういうのって、実際にライヴをやってるからこそ、出てくるものだと思うんですよ。セッションしながら、ざっくり掴んでいく感じも新鮮でしたね。以前、呼人さんとやる時は「お願いします」って感じだったんですけど、今回は自分たちの意見、主張も出来ていて、一緒にやれた喜びを噛みしめながらやってました。

3人でバンド的にやっていく感覚もあったわけですね。

北川:
ベースが一緒に歌ってる感じが良かったですね。

久々にやって、そうそう、この感覚みたいなところは?

岩沢:
アレンジを進めていく中で、当然この後、オレはここでハーモニカを吹くなとか、ここはこういうフェイクがほしいねとか、ここはこういうソロがあったらいいねって、自然に聞こえてくる音が結構あって、しかもそのイメージをスタジオにいるみんなが共有出来ているところがおもしろかったですね。阿吽の呼吸じゃないですけど、かゆいところに手が届いたレコーディングだった。

サウンドも懐かしさと前向きさとが見事に共存しています。

岩沢:
呼人さんが歌詞をすごく読んでくれて、歌に沿ったアレンジをしてくれたんですよ。抜きさしみたいなものをやりすぎると、普通になっちゃう曲でもあると思うんですが、あまりやりすぎないさじ加減が絶妙だなと。寺岡呼人ワークスっていう。昔はそれをただただ見てるだけだったんですが、今はそれを横並びで見られるというのもうれしかったですね。

歌もギターも、勢いと味わいとが両立してますよね。

岩沢:
歌に関しては、淡々とした中でドラマを作るみたいなイメージでした。ひょうひょうと歌ってるようで、キーが高かったりするので、気を抜けない。でもそこを見せない。高いんだけど、高くないよ、みたいな( 笑)。

ハーモニカも伸びやかでいいですよね。

岩沢:
一番時間がかかりましたね。