『友 ~旅立ちの時~』 Special Interview

楽曲誕生~ 込められた想い

― 『REASON』以来、約8 ヶ月ぶりのNew Single です。NHK 全国学校音楽コンクール(N コン) 中学生の部 課題曲になっている曲ですが、もともとあった楽曲だったと聞いています。

北川悠仁
「最初は遡ること2 年半前くらいかな。東日本大震災直後に、全国ツアーを縮小してやることになったんです。その中で、ツアーをまわることへの不安や、いま音楽を鳴らして本当にいいのかと、混沌としているスタッフのみんなに向けて、「これから一緒に旅に行くんだ」と背中を押すような想いを込めてつくったのが始まりです。そのときはまだワンコーラスもなかったんですが、旅をしながら少しずつ肉付けをしていって。その過程で、徐々に「東北の皆さんにこの曲を届けられないか」という気持ちも芽生えて。その後、急きょ決まった東北ツアー限定で披露させていただきました」

― 当初はリリース予定もなく、完全に“想い” が先行した楽曲だったんですね。

北川
「はい。そして去年の後半にN コンのお話をいただきまして。ゼロから楽曲をつくることも考えたんだけど、意味を持って生まれ成長してきた『友 ~旅立ちの時~』をさらに多くの人に聴いてもらえるようバージョンアップさせようと。それを全国の中学生のみんなが歌ってくれたら、この曲の辿ってきた道筋にまた大きな意味が加わるんじゃないかと思いましたね」

― 曲の意味合いが年月が経つにつれ重なり、凝縮されていったんですね。タイトルにもなっている「友」というワード自体は、パッとすぐに出てきたんですか?

北川
「そうですね。友に関しては、心の中からふっと自然に出てきて。それ以上もそれ以下の言葉もない。フラットに、なにも考えずにつけましたね」

― 岩沢さんは、『友 ~旅立ちの時~』という楽曲にどういった印象をお持ちですか?

岩沢厚治
「東北ツアーでの披露があったりしたんですが、それが終わった段階で、一度曲自体は置いておいたんですよね。なので、この2 年の間で、ものすごく曲を噛み砕く時間があったんですよ。もっとこうしたほうがいいんじゃないかとか、段階を踏んで曲との向き合い方が変わっていきましたね」

2年半を経て~ 一発録りの意味合い

― 今お話にありましたが、2 年半越しのCD リリースということで、曲の中には制作してすぐに発表するものと、長い時間をかけて世に出す場合とがあると思うんですが、今回は後者ですね。

北川
「いろんな音楽のあるべき姿ってあると思うんだけど、そのあるべき姿として、この曲はとても素晴らしいんじゃないかなと思っています。最初に自分が蒔いた種があって、それが岩沢くんとでゆずになって。そして斎藤有太さんにアレンジしてもらったものが東北の皆さんのものになり。
今度は中学生の皆さんを通して日本中のものになっていくっていうことが、無理がなく、流れの中で曲が人を介しながら成長してくれるのは、音楽にとって、曲にとって本当に素晴らしいことなんじゃないかな」

― とても自然な感じがします。

北川
「うん。無理や無茶がひとつもない感じ。もちろん、無理や無茶があって、踏ん張ってできたりとか、化学反応を起こすことも大好きなんだけど。路上時代に自分たちが好きで歌っていたときは、その歌がどうなるかなんてわからないまま、自分たちの歌がみんなのものになって、CD になって…。すごく自然な流れだったので、ある種、自分たちのコアな部分としての音楽のかたちじゃないかなと思います」
岩沢
「何度かレコーディング自体は試みているんですよ。一度完成してはまた分解して、を繰り返して、何バージョンもレコーディングしてきてました。でも、つくり直しと言うよりは、長い時間をかけてたくさんプリプロをしてきたという印象ですね。そしてまたそれを、有太さんのアイディアで一発録りという方式でレコーディングできるまでに至りました」

― 最終的に『友 ~旅立ちの時~』は、ボーカル、楽器を一斉に鳴らして録音する一発録形式りでレコーディングされたんですね。これには驚きました。

岩沢
「どう考えても今のご時世に一発録りっていうのは…っていうのはありますけど、そういうことをあえて提示してくれた有太さんの心意気、そしてそれに賛同することのできた我々もですけど、それほどたくさんかけてきたプリプロの時間と、曲の持っているヒューマンな感じとが相まって、ようやく完成したんだと思います」

― 今回のYUZU ARENA TOUR 2013 GO LAND でもキーボード・バンドマスターとして参加している斎藤有太氏の一発録りのアイディアを受けて、率直にどう思いましたか?

北川
「 聞いた瞬間、すごくいいなと思いました。いまは時代が進歩…いや進化して、当時僕らがレコーディングしていたものとは大きく違ってきていて。ある種、いかようにもできる部分はあるじゃないですか。でも、ここにきてもう一度、みんなで“せーの、どん!” って音を出したときに、ただのパーツとしての音じゃなくて、その瞬間に生み出されるひとつの“生命体のうねり” みたいな。そういうものが出せたら、この曲の持つ息吹が伝わるんじゃないかなと思いました。以前『ワンダフルワールド』のときも、久石譲さんがオーケストラの一発録りをやってくれて、そのときにすごく感動したのを覚えているんですよね。オーバーダビングに慣れてきていた自分たちにとって、曲に向かって一斉に音を出したとき、そこで響いて共鳴しているものに、本当に生命体のようなうねりを感じたんです。今回の曲もオーケストラではないんですが、バンドアンサンブルとして、ただ楽譜を見て譜面通りに演奏するということじゃなく、その音の響きを感じながらのレコーディングをこの時代でできたら、斬新というか、新しいものができるんじゃないかなと思いましたね」

― 技術では表現できない、生のうねりが凝縮されているような気がします。

北川
「うん。でも、それを可能にしたのは岩沢くんの言ったとおりで、これまで何度もレコーディングをしたりライブもしたり、曲が完全に自分たちの中に入っていたんですよね。まっさらな状態でいきなりみんなの音聞きながらやれって言われたら厳しかったと思うけど、みんなの中にこの曲が入っていたからできましたね」

― なるほど。歌詞はどのように書き直されていったんですか?

北川
「最初はもうちょっと表現が荒かったんですよ。もともと誰に聴かせるってものでもなかったので、ポツポツ日記を書くくらいの気持ちで、歌の譜割りの乗せ方とか、言葉のチョイスの仕方とかがざっくりしていたんです。だから、言葉のニュアンスだったり、譜割りを丁寧に書き換えたりと、より制度を上げていった感じはします。ただ、基本的な気持ちはずっと変わらないですね。中学生であろうと大人だろうと、葛藤はするし不安もするし、前に進んでいくんだっていう気持ちもどの世代の中にもあると思ったので。ひとつの言葉の中に、伝えたかったいくつもの想いを凝縮させて、この言葉しかないと思ったものを選んでいきました」

― シンプルだけど確かに響く言葉を選んでいるのは、『with you』にも共通している気がします。

北川
「昨今のN コン課題曲も聴かせていただいたんですが、結構むずかしかったり、言葉がつめこまれているものが多いなと思って。この曲は音と言葉が一体となって、スッと子どもたちの心の中に入っていければいいなと。なるべくシンプルな言葉で、というのは大事にしていました」

― 楽曲の中に一貫して登場する「空」というワードが、とても象徴的な気がしていて。最後の<同じ空の下 どこかで僕たちは いつも繋がっている> という歌詞に、いろんな感情や想いが集約されているなと。

北川
「空って、自分のそのときの心情によって見え方が全然違うなと思っていて。同じ美しい空でも「なんでこんな綺麗な空なんだよ、馬鹿野郎!」って思う時もあるし(笑)、曇り空だけど「こういうのもなんかいいね」って思うこともあって。自分の心情を表すようなワードなんですよね。この曲のなかでは、最初に出てくる<見上げる空>っていうのは迷いや不安、混沌としたものがたくさん含まれているんだけど、この曲を歌いきっていくなかで、雲の切れ間から光が差し込むような、輝く方向に変わっていけばいいなと思いました」

― 決して大げさではないんだけど、静かな躍動感のような? 特に中盤から終盤にかけて? 沸々とわきあがっていく展開に、鳥肌が立ちます。

北川
「使っている楽器に派手なものはないんですけど、自分たちの演奏や言葉の持っていき方で展開の面白さみたいなものが出せたらと思ったし、シンプルなものでどこまでやれるのかっていうのは考えていました」

― 岩沢さんはいかがでしょうか?

岩沢
「つくるうえで一番気をつけていたのは“やりすぎないこと”ですね。ド派手にしたくないなと。この曲、たぶんゆずの曲の中でも過去最大の“そんなにハモってない曲” なのかなと思うんです。とはいえ地味にしたくはなかったので、いくとこはいって、引くとこは引いて、より良く響くコーラスを考える。こういう曲なので、そういうことには気をつけましたね」

― 演奏のアンサンブルについては、いくつかの案の中から試行錯誤していったのでしょうか?

北川
「一番最初に東北ツアーでやったときに、そのときにいたメンバーで演奏したバンドアンサンブルがすごく良かったんです。なので、プログラミングしてもう一度、っていうよりは、ツアー時にまわっていたシンプルなアンサンブルに+a ということしか考えなかったですね」

― 迷いはなかったんですね。

北川
「なかったですね。歌詞の話に戻るんだけど、後半の歌詞、最初は<どこまでも続き 輝くだろう>だったんですよ。<だろう>をつけてた。そうであってほしいだったり、希望的な終わり方をしてたんですよ。でもこの2 年半で、セッションしたり歌詞を書き直している間に、自分の中でこの曲が確信になっていって、<だろう>から<ている>という感じで強く言い切れるものになりました。この曲をつくっていくっていうプロセス自体が、この曲の中の物語とリンクしています」

― 岩沢さんはいかがですか?

岩沢
「皆さんスーパーミュージシャンなので、演奏はそれぞれの解釈で。でも、やっぱり歌で引っ張っているところもたくさんあると思うので、それを感じ取ってもらって。CD の音源とライブの音って、どうしても遠くなりがちなんだけど、この曲はCD で聴いてもライブを聴いているような、割と近いところに落とし込めているのかなというのは思いました。もちろん、またライブでやればもっと良くなるっていう期待感も強いです。ただ“CD だからこういう感じに聴こえるんだな” っていうのじゃない。そういう空気がある曲ですね」